英雄クロニクル

ルシルム・エント・フラウス。
オーラム共和王国国王。

先代国王の崩御した刻碑歴990年に、わずか7歳の幼さで王座に就くことになった。
評議会による合議制を取り入れ共和王国と国名を改めた刻碑歴512年以来、王家の権力は衰退する一方であったが、この幼王を以て完全な傀儡政権となった。

この年頃の少年らしからぬ活力や覇気に欠けた物腰は「物心付くか付かないかの内に、傀儡の王として首を縦に振る日々を過ごしたせいだ」と双子の姉が断じて憤慨しているが、先王存命の折から「姉弟で性別を取り違えて生まれた」と噂されるほど大人しく線の細い子供であった。

唯一の趣味である横笛の腕前は宮廷楽士のお墨付きだが、本人の気性もあって見知らぬ人前で披露することはまずない。

アーマダ・アウル・フラウス。
オーラム共和王国王姉。

ルシルムとは男女性別の異なる双子であるが、幼い頃はまったく区別がつかないほどよく似ており、年頃となった今でも弟が男子として極端に線が細い部類であることもあり、入れ替わりが成立するほどよく似ている。

ただし性格はの方は似ておらず、姫らしい容姿にそぐわず非常に活発。
よく食べ、よく眠り、よく話し、狩りを好み、自らの名を冠した特注の巨大ライフル銃を手に戦場に立つ姿もまま見られる。お忍び市を徘徊することも多く、王都アティルトの民草には「姉姫様」と慕われている。

弟を蔑ろにする現評議長のベルリッテンを毛嫌いしており、自称「反評議長派の重鎮」だが真面目に相手にされておらず、奔走するも空回り気味。

ベルリッテン・ヘルベルス。
オーラム共和王国第96代目評議員議長。

「評議員の地位を金で買った」と噂される豪商上がりの偉丈夫で、不思議な人好きのする愛嬌もあるが、誰もが認める煮ても焼いても食えない男。
刻碑歴990年の評議長就任直後、先代国王崩御と幼王擁立という政変を経て、飛ぶ鳥を落とす勢いで“商才宰相”と呼ばれる現在の地位を盤石にした。

評議長の座は貴族院・軍部・商業ギルドの3勢力で5年任期の持ち回りとされることが共和王国となって以来の通例であり、刻碑歴995年からは軍部のロウハルト元帥が97代目となることを目されていたが、現在異例の2期目を務めており、刻碑歴1000年には3期目を務めるのではとも噂されている。

ロウハルト・ヘルター。
オーラム共和王国の軍部を統轄する元帥。

近年希に見る規模での国土拡大を果たした、刻碑歴974年の対イズレーン侵略戦・ギボール戦役において30代の若さで総大将を務め、その功績をもって中央軍将軍位を経て元帥となった。

天賦の剣才の持ち主として国内外に勇名を馳せているが、戦術級の指揮能力、戦略級の作戦立案能力、そして政治力とあらゆる面において優れた手腕を発揮する非常に多才な人物でもある。

主に軍部の人間からなるロウハルト派の人間には国政の頂点である第97代目評議長となることを待ち望まれていたが、第96代目評議長ベルリッテンの2期目就任を黙認。
現在は貴族院の有力者であるヴァルト伯爵と部分結託し、貴族院・軍部・商業ギルドの3勢力のバランスを保たせている。

どちらかと言えば実直な性格のようだが、清濁合わせのむ器量もあり、余人には腹の中を見透かすことはできない。

ヴァルト・ヴェリ・ヴァロネス。
オーラム共和王国伯爵。
オーラム評議会議員。

オーラム王家に対する忠臣。王家よりの信頼も篤い。
公爵家に続く歴史ある貴族のため領地も広大で、オーラム貴族の中での資産は最も多いといわれている。

ヴァロネス家は天空に住まう神族の血を引く家で、ヴァルト自身も時代を経て薄くなったとはいえ神族の血筋にあり、身に危機が迫ると光の翼が顕現する。

金髪碧眼白磁の肌を持つ20代後半の青年。また豊富な資産と伝統を背景にした私的騎士団を保有している。

セフィドの“不殺の剣聖”スランとは国を越えた親友だった。

アベル・レスターション。
オーラム共和王国男爵。
軍部魔導院導師。

ヴァルトリエ国境付近に領地を持つ男爵位の魔導師。
貴族でありながら軍部にも籍を持ち、魔導院導師を務める程の魔力を持つ。強大な魔力により闇を屈服させ、闇を纏い、闇を操る。

元々は一介の魔術師だったが独自に辺境に要塞を築き、強引に自らの支配地とした男。爵位は後付で与えられた物で、当人はそれを認めていない。

それゆえオーラム評議会からも軍部からも半ば独立した特異な存在であり、独自の行動理念で動いている。

レオノーラ・アドラー。
オーラム共和王国五の騎士団団長。ト

20代後半の女性。
７つある騎士団、その5番目の騎士団を率いる。一の騎士団団長であり、7つの全騎士団を束ねるレオルーク将軍の娘。
生真面目で苛烈な性格の上に職業意識が高く、評議会の決定に従い確実に任務を遂行する。

“鋼鉄”と称される程の本人の防御力の上に、アドラー家に代々伝わる真紅の鎧の驚異的な防御力も加わり、物理的な力で彼女を傷つける事は不可能だと噂されている。
そしてそれ以上に、彼女の心を折る事はできないとも。

鎧竜型獣人。
ロウハルト・ヘルター元帥の副官。

ブ厚く強固な外皮を持ち、2ｍを越す鎧竜型獣人。
戦士としても非常に優秀で、古くから将軍を補佐してきた生え抜きの軍人。基本的に仕事以外では口を開かないが、外見とは裏腹に知的でとても良く気が効き、面倒見も良い。

リカルド・マスケリーニ。
オーラム共和王国辺境軍の若手中隊長。犬頭の獣人。

セフィド国境付近にある街の部隊を率いる。基本的に怠惰。サボりぐせが多いが、かなりの指揮能力を持つ。基本自分では動かない。

優秀なスペックだが良くサボるので、辺境軍上官から面倒な仕事をよくやらされる。見た目通りの伊達男で女好き。その愛は種族の壁を軽く越える。

マルビタン・マールミネル。
私設傭兵団「金色の騎士団」団長。

30代中盤、中骨中背よりややがっしりした体格の偉丈夫。
騎士然としたやや大仰な態度や口調だが、特に権力や立場を振りかざす事はない。曲者揃いの団を率いる身だが、よほどの事がない限り団の事に口を出さず、暖かく見守っている姿勢からか、団員から慕われている。
栄養マニアだがプリンが好き。

金色の騎士団は騎士団を名乗っているが、正規の騎士団でもなんでもない。
仕事外の平時では自警団まがいの活動をしているため、民衆の評判は割といいようだ。

カルヴァ・ジャール。
マッカ出身の傭兵。

神か悪魔か、隔世遺伝で血を受け継いだ6本腕の男。
ポジティブな熱血漢で、友情に篤く決して仲間を見捨てない性格と、腕を振るえる戦場があればどこでも駆けつけるため、多くの傭兵仲間を持つ。

マッカに居た時代にはアシュトアロゥと腕を競い、ゼヒュンがアシュトアロゥの角を叩き折ったと聞きゼヒュンに挑み、左腕3本を落とされたのも、今では良い思い出らしい。

小鳥遊祀（たかなし まつり）。
現役女子高生。

黄金の門が生み出す黄昏の聖域に現れるゲートにより、突如この世界に飛ばされてきたトラブル体質の女子高生。
その影響で彼女の携帯に人格と魔力が宿ったらしく、携帯を魔導器として攻撃防御にフル活用する。彼女自身に戦闘能力はない。

基本前向きな流され性格で、現在の異常な状況に流されつつも、いつかもとの世界に帰れる事を信じて明るく元気に生きている。

現在はマルビタン率いる金色の騎士団に保護されていて、戦う必要はないと言われているが、自分の食い扶持は自分で稼ごうと努力しているようだ。

ティナ・アナリティ。
軍部魔導院導師。

見た目は20代の女性だが、ハーフエルフのため実年齢は100近い。
魔導院の《門》研究機関「トリレンマ」に籍を置く「黄昏の聖域」研究の第一人者にして道師。《門》の力を一部解明しており、ゲートを通して自作のゴーレムを召喚する。

ゴーレム研究と複数体同時操作においては、世界中でも五指に入る腕前だが、それとエルフ譲りの美貌以外は私生活に置いてもあまりパッとしないのが難点。

セフィドの“守護神兵”アラバスターとは旧知の仲で、ゴーレム研究と称してはアラバスターをいろいろ調べているが、かなりの特殊技術のようでまったく分析できていないらしい

商業ギルド（ベルリッテン派閥）子飼いの用心棒まとめ役。
艶消しの黒い鎧を纏い、音もなく獲物を仕留める。

仮面の下の目は冷たく、年齢性別共に不明。
その存在を知る者からは恐怖の象徴として語られ、その暗殺術と戦闘能力は人外の領域だと言われている。

ロサリオ・コルネート。
オーラム王宮に出入りを許された宮廷楽士の一人。

20代前半、すらりと細身な芸術家体型の美青年。
自信家でナルシストでアホの子だが、己すら惚れ込ませる美貌と天才的なハープの腕前のため固定ファンは多い。中には彼の奏でる楽曲ではなく、愛すべきアホな言動のファンを自称する物好きもいるとのこと。
「音楽は全てを超越する」と戦場まで押しかけることがあるが、戦闘行為はほぼ支援しかできない。

残念な彼だがそれでもハープの腕は天才的なので、ファンであるか否かに関わらずその調べを耳にした味方は戦意を向上するのだという。
それはとても凄いことなのだが「敵も味方も聞き惚れて剣を手放すべきなのに！」と本人は結果に満足していないようだ。

なお愛用のハープは戦場に持っていくには不向きな大きさだが、周囲の反対にもめげずに常にそのハープを持っていく。そのため移動スピードは恐ろしく遅いのだが、何故か逃げ足だけは恐ろしく早い。

西方教会の影響力が強いセフィド神聖王国出身の聖職者。
祖国で莫大な借金を抱え、一攫千金を夢見て交易の要である中央国家オーラムへやってきた。

「信仰じゃお腹は膨れないのよ！」が口癖で「イチにもニにもお金！」という守銭奴。

西方教会が崇拝する光の神よりも黄金（ヒカリモノ）への信仰心が勝っているようで、時に反道徳的なえげつない手段で儲けようと試みたりするものの、悪くなりきれない生来のお人好しな性格からチャンスを逃すこともしばしば。あやしげな儲け話にもひょいひょい飛びついては貧乏籤を引いているが、全く懲りる様子もなく今日も稼ぎに精を出している。

本人は黙して語らないが没落した上流階級の令嬢だという噂もあり、彼女の人格醸成にはそのあたりも影響しているようだ。

ミーナ・ミルク。

オーラム王宮に仕える小間使い。
基本的にどんくさい。
細かな失敗はもとより、周囲を巻き込み大惨事を起こしたりもするが、本人に悪気がなく人並み以上の熱意をもってことにあたるため、今では「あまり重要ではない案件」を多く任されている。

国の為に戦う兵の士気高揚のため、王宮付きの料理長の手による弁当を届けるのもその一環。単に運が悪いのか、どんくささゆえに回避できないのか、その度に戦闘に巻き込まれてる模様。

また評議会の差配によって、「あまり重要ではない」お飾りの存在であるアーマダ王姉殿下の所用を務めることが多い。王都アティルトにおいては、王宮を抜け出したアーマダ姫を捜しまわるメイドの姿をよく見かけることができるとのこと。

リブレリー・リール・ブロカント。
オーラム共和国侯爵。
オーラム評議会議員。

ひょうきんかつ軽妙洒脱な40代の中年貴族。
ブロカント家は古い血筋と高い爵位誇る名家。
幼少のみぎりからブロカント家に伝わる数多くの骨董品に囲まれ、骨董品マニアの沼にどっぷり首まで浸かることになった彼は、大口の顧客として商業ギルドと太いパイプを持っている。
またリベラルな気風で知られ、旧習に捕らわれない理に即した判断力の持ち主であるため、軍部からも貴族院との折衝役として重宝されている。

骨董品マニアが困じて刻碑以前の歴史にも興味を持ち、家督を継ぐ以前の若かりし頃は世界各地の古代遺跡を巡り歩いていた。
当時マッカ地方のとある古代遺跡で手に入れた「魔物封じの壺」は、現在も観賞用として、実用品として、常に手元に置いている。家督を継いでからは自ら遊行することは減ったが、そのぶん若い冒険者や彼らを束ねる冒険者ギルドへ援助が増えた。貴族院の同僚には「道楽も程々に」と苦い顔をされることもしばしばあるが、本人はいたって涼しい顔をしている。

メネルティリオン・グローランディア。
オーラムのみならず、ブリアティルト全土で名を知られる賢者のひとり。長い時を生きた老齢の男性。

オーラムの貴族の家系に生まれ、幼い頃より魔法に関する才能を発揮し、魔導院トリレンマの研究者として《黄昏の聖域》拡大問題に関する研究に精を出す。
しかし予備費なども設けられているとはいえ、評議会の承認が降りなければ調査費用の追加も難しい体制に不満を覚え、十数年の勤続の後に野に下ることになる。

以降は特定のパーティメンバーを持たないフリーの冒険者として偉業を為しつつ《黄昏の聖域》内を探索、在野の研究家として成果を上げるものの、ある時を境に消息を絶つ。
当時は「聖域の活性化現象に巻き込まれ死亡した」「別の世界に転移（とば）された」などと噂されたものの、やがて人の口に上ることもなくなった。

そして少なからぬ時を経て刻碑歴997年。
全土を巻き込み拡大していく戦火に燻り出されたのか、彼はふいに姿を現わす。
しかし何があったのか、かつての世界を救うという情熱はなりを潜め、厭世的な気むずかし屋になっていた。

オーラム評議会は貴重な戦力として“大魔法使い”の彼に魔導院――
ひいては軍部への復帰を嘱望されたが固辞。
現在は気が向いた時に、気が向いた相手にだけ力を貸している。

「無駄じゃよ。無駄、無駄。何をしたところで――
　フン、“英雄”とやらならば運命（それ）を覆すことができるのか？」