英雄クロニクル

アルテミシア・ルミニス・セフィド。
セフィド王家の王女にして第一王位継承者。

先王が崩御した刻碑歴992年に新女王として戴冠の儀が行われようとしたが、王位継承に必要な三種の神器の内2つが行方不明になった為に継承は中止された。

王家に対する国民の忠誠心、王女本人の人品骨柄、そして何より唯一残された神器・聖盾に継承者として認められている事から、実質上の統治者として国政を取り仕切っている。

しかし近年顕著な世界の乱れを「正しき王が即位していないせいだ」と憂う声も少なからずあり、表面上は毅然と振る舞っている王女にも心労が積み重なっている。

グラハム・ストーレン。
先王の懐刀を務め、現在の王座空位のままの政権を支える支柱でもあるセフィド神聖王国の筆頭家老。

武官から文官に鞍替えした変わり種であり、2メートル近い体躯は老いてなお屈強。

武官のまま功績を積んでいれば、三種の神器の内1つ、霊剣を預かり振るう“セフィドの剣”の位を得ていただろうと言われた剣の使い手であった。なお現“セフィドの剣”であるライオネル・ストーレンはグラハムの甥という続柄である。

血の気が多く激しやすいが、感情任せの意見で政治を行う無能では決してない。

バルパモン・カルミナ。
西方教会高司祭。高齢のため引退間近と噂されている最高司祭の次期最有力候補。

神にすべてを捧げる覚悟は嘘偽りない本物だが「信仰は国よりも人よりも優先されるべき」という主義を知る人物からは危険視されている。本人もその考えが受け入れられ難いものだと理解しているため、方便と称して柔和な司祭として振る舞い、民の尊敬を集めている。

御国を来たらせ給うためには策謀を巡らせる事を厭わず、セフィド王家に限らず国外の権力者にも独自のパイプを持っている。

行方知れずの王権を司る三種の神器、宝冠と霊剣の捜索を目標とする遺失王権探求会の代表でもあり、彼の指示により少なくない数の人間がセフィドから発っている。

ライオネル・ストーレン。
セフィド神聖王国近衛騎士団団長。

“白髯大老”グラハム・ストーレンの甥であり、伯父同様の立派な体躯にふさわしい剛剣の使い手。
王権の神器である霊剣を国王から預かり戦う“セフィドの剣”の称号を持つ筆頭騎士であるが、現在は霊剣が行方不明であるため、若かりし伯父も戦場で振るったストーレン家の家宝・一角獣の鋭角刃（ユニコーンホーン）を帯剣している。

生真面目な性格で、少しでも騎士としてふさわしくない行いを命じられそうになると意見するが、根が単純なので結構簡単に言いくるめられる。
根の単純さも含めての政治力の弱さを、オーラムのロウハルト元帥と比較され扱き下ろされることも多いが、剣士としての才覚はそう劣るものではない。

シュピナート・ディ・マイスター。
名門・マイスター家に生まれた青年騎士。

いかなる戦場からも無事に生還する事から“不死身の騎士”と讃えられており、華やかな容貌と気さくな性格とが相まって民衆からの絶大な人気を得ている。

アルセナ・シュベルトライト。
武門で名を馳せる名門騎士貴族家の子女。

王都セリオンにある王立学院に籍を置く学生かつ新米騎士。
清楚可憐柔和快活と完全王道を地でいく少女で、剣魔使い分ける器用貧乏さも相まって戦闘能力は高くない。
常に慈愛と笑顔を振りまきながら、誰かのために立ち回っている。

フランツ・ガーウィン。
「城をも崩す」と呼ばれる巨大な強弓の使い手。「攻城強弓」と書き「バリスタ」と読む。

異常な目の良さは遠い先祖である妖精族の血に由来するが、人並み外れた巨躯のため「食人鬼の間違いだろう」と知人から、からかわれる事も多い。不器用な照れ屋。

スラン・ローズウォール。
国内外に名高い西方教会の聖堂騎士。

元はセフィド王家に仕える正騎士であったが、とある事件で部隊を壊滅させた事を悔い騎士位を返上した。オーラムの“天使伯”ヴァルトとは古くからの親友。

アダマンティア・ラバン。
西方教会聖堂騎士。遺失王権探求会所属。

バルパモンに心酔し、彼から下る使命はすべて神の御心に適うと信じ、善悪の判断をする事なく「喜んで」果たそうとするため、よく問題を起こしている。

エドワード・マーフィー。
穏やかな顔つきの青年司祭。

器用貧乏ゆえに暇なし。何かしらの雑用を任され忙しく立ち働いている事が多く、少しくたびれて見える。
人に与える印象は薄いが地味に人望がある。

身元を隠し流浪する、冷たく荒んだ目をした青年。

由緒正しい騎士の家系に生まれ育つが、ある致命的な失態を悔いた父は自刃して果て、当時正規の騎士に成り立てだった彼は騎士位を返上し、故国を旅立った。

白く輝く化粧石も眩しい、甲冑騎士を模した石巨人。

有事の際に目覚めると伝えられるが、実のところはそうでもない。
性格はかなり俗っぽいが、浮き世の身分に左右されない高潔さも持ち合わせている。

人間の顔に獅子の身体を持った神獣。

中性的な容貌をしており、元より明確な性別はない。
西方教会が崇める光の神に帰依しているが、人間への関心は非常に薄く、超然とした態度を崩さない。

アルテミシア王女の気の置けない友人。

王女の私室に忍び込んでは、口うるさい筆頭家老に怒鳴られている、明るくかしましいムードメーカー。
好きなものは蜂蜜。身長は約30センチメートル。

ヴァルトリエ帝国から亡命してきた第四機械化魔導騎士。

周囲のエネルギーを吸い尽くす特殊な装置を埋め込まれており、普段は西方教会の聖遺物で封印しているがダメージを受けると忌むべき本性が顕わになる。

エヴァルド・アガッツァーリ。
セフィド神聖王国近衛騎士団団員。

20代中盤の青年騎士。一般から取り立てられた騎士ではなく、由緒正しい爵位持ちの貴族であるアガッツァーリ家の三男坊。
父親の教育が嫡子である長男に集中した上、遊び金に困ることなく育ったせいか、放蕩上等・天下御免のいい加減男に成長した。

さすがに野放しのままでは家名に関わるという父親の意向により近衛騎士団に強制的に入団させられたが時すでに遅し。放蕩気質はそう簡単に更正されるはずもなく、騎士の魂とも言える剣は質に流され、抜くと鳩が出るとか花が咲くとかいう玩具の剣にすり替わっている。

可能な限り楽に生き、面倒事は他人に押し付け、子供を可愛がりご老人に親切にし女性は口説くがモットー。

植物の声を聴き、操る能力を持つ少女。

幼少期に記憶を失い、セフィド北部の山岳を彷徨っているところを西方教会の施設に保護された。
精霊との取り替え子（チェンジリング）と思われているが、植物と心通わす特殊な《力》以外は普通の人と変わりはない。

その《力》のせいで植物と人間を分けて考える認識が薄く、世俗においてはややズレた人物と見なされており、現在は施療院で使用する薬草などの栽培で生計を立てている。

ストレイン・トッカータ。
西方教会聖楽隊に所属する青年。

ヴァルトリエ帝国西部地域出身。
魔導科学による自然汚染の影響かどうかは不明だが、強い光に弱い白すぎる肌と、血の色を透かした赤い瞳をに生まれつく。
幼少期は優しく理解ある家族の下、ままならない体質を除き何不自由なく暮らしていたが、魔導科学実験により生み出された怪物が村を襲ったことにより、彼の生活は一変した。

帝都から遠く離れ、いまだ古い因習や迷信が多く残る村の村人は、彼の家族を含む大勢が亡くなった原因――魔導科学実験体の襲撃は、吸血鬼めいた姿と体質で知られる彼に起因すると定め、そこに“魔女狩り”の矛先を向けた。

魔を払う強い光のある方へ逃たのは、己の無実を証明したいという無意識の顕れだろうか。聖帝国境地帯を放浪していたところを西方教会の司祭に保護され、現在に至る。

一時は帝都の楽団で活躍していた父親に幼い頃から教わっていた喇叭（トランペット）の腕は人並み外れており、その澄んだ音色は聴く者の心を癒し、鼓舞する。

小山の如き巨体を誇る、白騎士位を持つ牛の獣人。

豪放磊落かつ忍耐強い努力家。
謙虚な態度を固持し続けているため、多くの騎士仲間にも慕われている。反面、殺戮行為を行う者に対しては侮蔑の態度を隠さず、過激な信念に基づき殲滅戦を是とする一部の西方教会信徒を嫌い抜いている。

彼は人間の村で育てられた戦災孤児である。
周囲と異なる己の姿に「俺は何者か」と自問自答し続けてきた彼は、村人に無体を働く領主の縁者とのいざこざをきっかけに放浪の旅に出た。広く世界を見聞し、獣人という存在がそこまで珍しくないと知った彼の自問は「俺は何をするべき者なのか」へと変化した。

その後、とある因縁でセフィドの民に命を救われた彼は、その恩義に報いるためにセフィドの民として兵役に従事する。圧倒的体躯で敵前に立ちはだかる彼の姿は、後の“門番”の異名に相応しく、幾多の戦場で敵の進軍を食い止め、味方の撤退を助け、結果多くの生命を長らえさせた。彼は己の存在価値を確固たるものとする。「俺は護るべきを護るものだ」

やがて功績を重ね騎士に取り立てられた彼は、当時最大の激戦区であったヴァルトリエ帝国との隣接地域周辺を護る鎮北騎士団の所属となり北面を護り続けた。
そして白騎士位を得た彼は、ブリアティルト全土を巻き込む大戦勃発に伴い、王都防衛の備えとして鎮央騎士団への転属を命じられた。

なお彼の身を包む常人の何倍もの鉄を使用した特別製の鎧は、鎮北騎士団時代に知己となった剣鎧都市アロンダイトでも名の通った甲冑師に通常料金で修繕整備してもらえるとのこと。

カーラム・グランフォージ。
剣鎧都市アロンダイトのとある剣匠に弟子入りしていた鍛冶師徒弟の少年。

思い込んだら一直線。
信念を曲げず、ひたすらに駆け抜ける一途さは長所でもあり、短所でもある。
若さゆえか血気盛んな所もあるが、年齢を考えれば思慮深いところもある。

鍛冶師界隈においてグランフォージ家は名工の血統と言われており、両親が早世したおりにその親友でもあった師匠に引き取られ、拳骨と共に鍛冶の技を叩き込まれながら成長した。

西方教会に異端視されかねないため口にすることはないが、実父の

「聖国の神器である霊剣はグランフォージの始祖が鍛えたものだ。始祖に並ぶ匠となれ」

という遺言を心の支えとしており、実際に巷間に伝わる神器としての《力》の片鱗を宿した「霊剣・偽」を鍛えることが出来てしまったことが、その傾向に拍車をかけた。

兄弟子にあたる師匠の実子が従軍先で戦死したことを契機に、とある目的の為に師匠の元を離れる決意をした。

「戦争が終わらないのは、アルテミシア殿下の元に神器が揃わず、聖王の座が空位だからだ。それなら俺が鍛えるしかない。
　平和にするには、“俺が”霊剣を打つしかない。その為には――」