英雄クロニクル

エリュシオン・ヨハネス・アーテルム。
ヴァルトリエ帝国皇帝。

国を代表する要職にありながら、滅多に人前に姿を見せることのない謎多き人物。
政治を始めおよそ世事全般に対する関心と執着が薄いが、魔導と科学にだけは傾倒しており、両者を融合させた魔導科学の第一人者として国内外に知られている。

痩せた寒冷地の広がる貧国であったヴァルトリエが、刻碑歴977年の即位以降の約十年で“北の精強”とまで呼ばれるまで発展を遂げたのには、魔導科学の普及が大きく関係している。
また賄賂に関心を示さず、家柄や年齢問わずに国政を任せられる人材を登庸する実力主義を掲げたことも、ヴァルトリエの躍進の要因となっている。

既に壮年と言える年齢に達しているが、即位以後容姿に変化が見られない為、不老不死であるとか、既に存在しない人物であるとか、様々な噂が飛び交っている。

皇帝に仕える侍従“黒小姓”をまとめる侍従頭。

謎多き皇帝の侍従に相応しく、彼ら黒小姓の正体も一切が不明。
お仕着せの黒衣に身を包み、アイマスクで顔を覆った彼らは、本来の名前すらも隠して通し番号で呼び合っている。現在、何番までいるのかすら定かではない。

彼ら自身が表立って動くことは希だが、その時々に応じて有力貴族や軍司令に下知を運び、国政を動かさせている。
皇帝が姿を見せないにもかかわらず、ヴァルトリエが破綻せずむしろ躍進しているのは彼らの存在あってのことと周知の事実となっている。

全員が皇帝仕込みの魔法の使い手であり、間諜・暗殺技能にも長けているとの噂もあり、それを裏付けるように刻碑歴977年の皇帝即位後数年間は多く見られた彼らの名を騙る偽黒小姓は、現在はほぼ存在しない。

クラニオ・スケレトス。
魔導科学省長官。

魔導と科学の力で生命を弄ぶ闇のマッドドクター。
生命をテーマに神に挑む技を好んで研究しており、趣味と実益を兼ね様々な倫理的問題のある改造動物・改造人間・人造人間の実験体を生み出してきた。
ヴァルトリエを支える魔導科学に対する造詣は深く、中でも科学の方面に対する知識は皇帝以上とも言われており、皇帝の私室へ踏み居ることを許された数少ない人物。
黒小姓の選定や教育に関しても一枚咬んでいると言われている。

莫大な資金を研究に注ぎ込むことのできる現在の地位に満足しており、世間一般で言う所の出世欲はないが、いつか強力な魔力の持ち主である皇帝を改造してみたいと思っているらしい。

ナイトガルム・エルランド。
黒水晶の輝きを放つ武具一式を授けられたヴァルトリエ帝国筆頭騎士。

機械より機械らしく任務に務め、私情を挟まぬどころか心さえなく、痛みも感じないと噂される鉄面皮ゆえ、誰が呼んだか“鋼鉄卿”。
騎士団を率いず、近衛として侍らず、勅命を受け単騎任務を遂行する“皇帝の剣”として国内外に認識されている。

由緒ある貴族の出自であるが、少年期から青年期にかけ長期に渡り行方不明になっており、同時に皇帝の私室へ踏み居ることを許された数少ない人物であるため、黒小姓出身だという噂もある。

ヴァルトリエ帝国機甲騎士団の主力戦車にして旗機。
別名“災厄を振りまく箱（パンドラボックス）”

戦車長は機甲騎士団団長ニヘル・アングルボザ。
苛烈で実用的な将校として国内外に知られている。

ヴォルフムント・ゼルトナー。
黒狼騎士団団長。

粗野な見かけによらず狡知に長けた狼のような男。
精強残忍なあらくれ者を率いる傭兵隊長崩れであり、ある地方領主に気に入られ騎士位を授けられた彼は、領主の娘を妻に娶り変死した領主の領土を継いだ。

レオンハルト・シュトラール。
黒獅子騎士団団員。

理想に燃える若き青年騎士。
魔導皇帝が即位する前の貧しい帝国を知らないため、古き貴族社会や騎士道に対する幻想がある。魔導や科学にはやや否定的。銃も好きではない。

ジェレミア・ランジェル。
機甲騎士団遊撃兵。
銃声と弾丸が届く頃には狙撃地点に姿がないことから人呼んで“幽霊狙撃手”。

一方的に攻めるのが好きなサディスト気味な気質だが、受けに回ると滅法弱い。
本人曰く「伏射するには都合がいい」胸の持ち主。

魔導科学省長官クラニオ・スケレトス作の人造少女。

強力な魔石が供給する魔力を動力源としており、大鎌状の魔力ブレードや飛行デバイスを使いこなす。
正義の味方のつもりだが常識が多めにズレている。

獣も住まない極寒の辺境に城を構える氷の魔女。

気怠い雰囲気を漂わせた美貌の少女に見えるが、垣間見せる異様な貫禄に相応しい年月を生きている。魔導皇帝とは遠い血縁と噂されている。

ゾーロト・モーロト。
火を使い鍛冶を能くするドワーフ族の優れた鍛冶師。

生粋の戦士ではないが創造と破壊は表裏一体であり、彼は破壊の面においても優れていた。彼の振るう黄金の鎚はあらゆるものを粉砕する。

ゲルハルト・グラーフ。
刻を操る能力を持ち、調子の良い時は因果律にすら干渉する才能を見せる、魔術に高い適性を持った少年。

同年代かつ同性の友人を求めており「男が好敵手（とも）と磨くなら剣」と多少迷走気味な今日この頃。

ンサッオ・イイコッカ。
魔法にも機械化技術にも縁がない小汚い中年男性。

懲役数年レベルの悪事はほぼ経験済みの小悪党で、各国の警備担当者に顔が利く。（世話される意味で）
臆病者だが、大口を叩いた結果最前線にいることも。

魔導科学の実験により誕生した第三機械化魔導騎士。

周囲のエネルギーを吸い尽くす特殊な装置を埋め込まれているが、常にエンプティが表示される欠陥品。理性はなくエネルギーをただ求める暴走状態にある。

実験的配備中の航空兵団主力戦闘艦。
機甲騎士団主力戦車ナグルファル配備後に完成し、戦場に投入された。

開発コンセプトである魔導レーザーを用いた電撃作戦を実現させるため、膨大なエネルギーを生み出す魔導機関が用意されたが、最新型ですら小型化には難があり、機体ベースには兵員輸送用の大型航空艦艇が使用された。
最新型魔導機関の生み出す熱量は膨大な推進力に変換され、大きく重い機体からは信じられない機動性をスキズブラズニルに与えている。

操舵士兼整備士はシルビア・ローレンツ。
新型航空兵器開発に対する意気込みと適性には魔導科学省からの引き抜き工作があったほど。
空を制するものこそ戦を制すると信じている自信家であり、ナグルファルをライバル視している。名実共に機甲騎士団の上を行くため功績には強い執着を見せているが、燃費が悪いため出撃回数は少なく、そのため一度の戦闘で大きな戦果を上げようと機体そのもので突撃するなどの無茶をし、整備ため出撃回数が少なくなるなど、順風満帆とは言えない模様。

戦場で敵の魔法に焼かれ、生死の境を彷徨ったかつての有能な将軍。
帝国の魔導科学技術により奇跡的に一命を取り留め、魔導機械の身体となり蘇った。

試作実験段階の機構も数多く取り入れられており、機密保持や短いスパンでの定期的なメンテナンスが必要なことなどから、大部隊を率いる将軍位を退き、その時から本名を敢えて伏せるようになった。
現在も機密技術を管理している魔導科学省からの依頼で前線に出ることもある。

肉体こそ機械だが精神は極めて聡明で誇り高く、帝国貴族としての矜持を保っている。

魔導科学省諜報課の若きエース。

まだ一般には普及していない最先端魔導科学の結晶・魔導演算器を自在に使いこなす新世代の逸材であり、魔導演算器が作り出す仮想魔導演算領域においては開発者を差し置いて帝国最強――すなわちブリアティルトに並ぶ者なしと言われている。

仮想魔導演算領域とは魔導演算器が《世界》の構成要素をシミュレートする事により創りだした“もうひとつの”《世界》であり、任意に設定値（パラメータ） を動かすことによって現実とは異なる法則を発現させることができる。
さらには魔力を媒介にそちらの《世界》の現象で現実を上書きすることも可能。
現実世界において彼女は、上書きによって実体化（マテリアライズ）させた情報体（プログラム）を自在に操る。

なお、普通サイズの胸部に関しては一時的な情報欺瞞は可能であっても、恒久的な現実上書きはまだ不可能な模様。
「中途半端」扱いすると、雷精めいた情報体をけしかけられ、脳内情報を改竄されるとの噂が魔導科学省内において囁かれている。

魔導科学省に所属する青年研究員。

現在の魔導科学省の研究と言えば、クラニオ・スケレトス長官が主導する魔導と科学の統合――機械化魔導兵装や魔導演算器にばかり着目されがちだが、魔導側の基礎をより強固なものとすべく古典魔導の研究も弛まず続けられている。

特に魔力に類する《力》の制御――発生・増幅・導引・蓄積・封印・消去などに関しては魔導科学の発展に欠かすことの出来ない分野であり、更なる深化が急務とされている。
しかし皮肉な事にその方面は“魔導皇帝”の業績が大きな壁となり、後進を遠ざけてしまっているのが帝国の現状である。

そんな中、“魔導皇帝”に深い忠誠を誓い、彼の研究成果に心酔しつつも、臆さず己が研究に没頭する彼の存在は魔導科学省においても一目置かれるものである。

魔力に類する《力》の干渉・封印制御を得意とし、それに付随して分析・解析もお手の物。
右目を被う眼帯は《力》を見る魔眼を隠すものとも言われているが、単に実験中の事故による怪我のせいだとも、クラニオ長官の魔導科学実験の被験体に立候補した結果だとも言われており、真実は藪の中。

研究第一で、基本ぞんざいな口調といい加減な態度だが、上司や尊敬できる人間には敬語で接する。
なお、悪名高いクラニオ長官に関しても、倫理観はさておき熱意と知識に関しては素晴らしく尊敬すべき研究者だと思っている模様。

オスカー・ファーレンハイト。
立法・司法府に所属し、上級司法官として辣腕を振るう青年。

“魔導皇帝”という絶対権力者を頂点とした現帝国において、しばしば法は沈黙する。

皇帝主導による「能力主義」を唱う帝国において、有能な者は違法を見逃され、重用される事例もまま見られる。

しかし、それが適用されるのはごく一握りの選ばれた存在であり、彼のように才覚を弁え、己の保身を第一とする人間にとって、それに賭けるのは確実性の低い博打でしかない。

「人を縛り裁くのが法であるなら、私は法（それ）に寄り添うとしましょう」

法の網を良く知れば、編み目を抜けて己に利するのは容易く、敵対する者に絡ませ封じるのも自由自在。
ましてや、法を作る立場にまでのし上がれば、恐れるものはそうそうない。

「鉄より冷たい鉄面皮」
「やること為すことすべてにおいて、人としての情けに欠ける」

周囲からの評判は惨憺たるものだが、彼はいささかの痛痒も覚えない。
敵対してはいけない相手をきちんと選んで立ち回る限り、能吏である彼が常に裁く側であるのだから。